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セレブね~みの初めてのピアノリサイタル

その日、セレブね~みはらしくなく緊張していた。
彼女は漆黒のロングドレスを身に纏っていた。
スレンダーなボディに腰まであるほのかにウェーブのかかった黒髪が揺れている。

そう、今日は待ちに待った、彼女の初めてのリサイタルの日なのだ。

まだ薄暗い舞台の袖で、彼女の師と共に開演を待っていた。

「確かに・・・・わたくしは、初めてのリサイタルの場はカーネギーと決めていたわ・・・」

彼女は側にいた師にそうつぶやいた。

「ええ、いつもそうおっしゃっていらしたわね、ね~みさん」

師が返した。

「でもね、先生、わたくし、先生に言われてわかった気がするのよ。
大切なのは・・・・華やかな事ではない。
本当に大切なのは・・・・演奏する場所じゃないんだって事・・・・」

師は頷いた。
「よくわかってくださったわね、ね~みさん。
千里の道も一歩からというように、何事も無理をしてはいけませんことよ」

「無理・・・?わたくしに、カーネギーは・・・無理・・・?」
驚いて尋ねるね~み。

「そういうことではないの。あなたにはカーネギーで演奏ができる実力はあるの。
でも…今ではないのよ。
わたくしはあなたにもっと・・・・
もっと大きな夢を持って欲しいの。
それは演奏を聞かせる会場の事なんかではないの。」
師はね~みの目をじっと見つめた。

「大きな・・・夢・・・・?」

「そう、演奏に入れ物など本当は些細な事に過ぎないのよ、
ね~みさんならとうの昔にお気づきになっているかもしれないけれど・・・」

「先生、ええ、ええ、わかりますとも。
どのような場所で演奏をしたとしても、演奏の中身が大切なんですものね。
それなのにわたくしったらカーネギーという場所にこだわってしまって、恥ずかしいですわ。」

「・・・いいえ、いいのよ、その事にね~みさんご自身が気づいて下さっているなら。
さあ、開演まであまり時間がないわ!
リハーサルの仕上げをしましょう!」

師はそう言うと、スポットライトのスイッチを入れるように合図を送った。
薄暗い舞台で一筋のスポットライトがグランドピアノを照らし出す。

「さ、ね~みさん、あなたのオンステージよ!」

*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*

ライトに照らされた舞台の上を、ね~みは風を切ってピアノに向かって行く。
シルクのロングドレスがシックに翻った。
艶やかなグランドピアノの前まで来ると、ね~みは客席に向かって微笑みながら軽く一礼をした。
マイクを持つ手が白く際立って美しい。

「みなさま、今宵はわたくしのリサイタルへようこそおいで下さいました・・・。
わたくしの演奏に余計な言葉は必要ないと思っております。
心を込めて、みなさまに演奏をお届けいたします・・・・」

そう言うと、ね~みはピアノに向かった。
ドレスの裾を気にしながら椅子に座って鍵盤を見つめる。
ノースリーヴから白く長い細腕が伸びている。
ふいにその、細く長い腕がふわっと宙に舞った。

舞台の袖から彼女の師が固唾を飲んでその様子を見守っていた。

「ドーレーミー、ドーレーミー、ソミレドレミレー・・・・」

この日のために、ね~みはこの曲を毎日8時間以上練習してきたのだ。

「・・・いいわ、彼女、今日は調子が良いみたいね・・・・」

演奏が続いている。

「ドーレーミー、ドーレーミー、ソミレドレミド・・・」

「やはり緊張しているようね、少し速くなってるわ・・・」

ね~みは緊張の為か、少し指が震えているようだった。

「・・・もう少し、もう少しで最後まで行くわ、そのまま、そのままよ!」

師は祈るように見守った。

「ソソミソララソー、・・・・・・・」

演奏がふいに止まってしまった・・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・」

長い沈黙が訪れた。

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・先生・・・・・・・わ、わたくしったら・・・・・」

「どうなさいましたの?」

「・・・・わたくし、こんな短い曲なのに、覚えられない・・・・・!!」

「ね~みさん!あなた忘れたの?いい?!演奏はね、完璧じゃなくて良いのよ!間違ったって止まったって良いの!
肝心な事はね、
もう一度聞きたくなる演奏
なのよっ!!」

「え?・・・・だってリサイタルなのに?」

「ね~みさん、リサイタルであろうが練習であろうが、演奏に対する心構えは一つだけよ・・・」

「せ、先生っ!!」

*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*

「先生、でも、もうすぐ開演してしまうわ・・・・どうしたら・・・・」

あまりの動揺に、泣きそうになりながらね~みが言った。

「ね~みさん、あなたは、あなたのままでいいのよ」

「先生、わたくしのまま?」

「そうよ、もう、舞台は始まっているの。ここは田舎の公民館かもしれない、そして客席はわたくしだけかもしれないけれど。」

「??」

「さあ、チューリップエチュードの続きを聞かせて頂戴。わたくしのためだけにね」


~続く~


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No title

www

まさかの続き物!
堪能致しました。セレブね〜みさん、
愛すべきキャラクターです⭐︎

ゆにくあさんへ

> www
>
> まさかの続き物!


注目点、そこですか~~~笑!
特に予定してないんですけど(え?!)とりあえず続く事にしてみました。

> 堪能致しました。セレブね〜みさん、
> 愛すべきキャラクターです⭐︎

言うまでも無く”セレブね~み”は私の分身ではありませんことよ^^;
特に外見はぜ~~~んぜん・・・・違いますからね~(^^)
漆黒のロングドレスを纏う北京原人・・・・・っ!!!
想像(妄想)したらめっちゃ笑えます!
さ~、次はセレブね~みに何をさせようかな~?

セレブね〜みさん、心待ちにしておりました!

しかも、執筆力が非常に高まってるような気がします。笑
愛読者かなり多そう。

管理人のみ閲覧できます

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続くんかい(笑)。

モル作さんへ

> セレブね〜みさん、心待ちにしておりました!

(^ー^)ノです
モル作さんに心待ちにしていただけるとは、光栄です~。
>
> しかも、執筆力が非常に高まってるような気がします。笑
> 愛読者かなり多そう。

執筆力高まってますか?!
嬉しいんですけど
実は執筆力よりピアノ力が高まってほしい今日この頃です(^^;)
セレブね~みの想像図を描こうと思ったんですけど
以前描いた北京原人のイラストでいいやん!
と、思ってしまった面倒臭がりやです。
スレンダーポディに北京原人の顔がミスマッチな
セレブね~みを想像すると笑えるかもしれません。

鍵コメさんへ

こんな妄想話にお付きあい下さりありがとうございます。
たまーに、ふと、こんな事あったら面白そう!
とセレブな話を書いてみたくなります(笑)

鍵コメさんのブログはいつも楽しみにしていますよ♪
私のは見る人が見れば、
一体何がしたいの?(^_^;)
という、気まぐれで適当な内容ですが
鍵コメさんのはピアノについてしっかりとして筋が通った内容で
感心させていただいてます。
演奏からもそんなお人柄が伝わってきます。

例の曲、なるほどです!
あれはとても難しいらしいですね!
でも鍵コメさんなら10年と言わずに弾けるようになりそう。
お互いに手を労りながら楽しんで行きましょう♪
 

真由子さんへ

> 続くんかい(笑)。

いいですねぇー!このツッコミ、笑えます!

続く

か、どうかは神のみぞ知る

とでも言っておきましょう!(笑)

こんにちはわはは!

面白かったです(>▽<)いひひひ
チューリップエチュード けっこう難しそうです!
脳内で想像してみたのですが
連弾ブギウギチューリップも楽しそうだなぁ(☆▽☆)
ばんちゃん会でね~み♪さんに頼むかもしれません(^▽^)うふふ
その時はよろしくお願いします!←私の酔っ払い具合によるかも?ですが

いもコンさんへ

> 面白かったです(>▽<)いひひひ

楽しんでいただけて嬉しいです♪

> チューリップエチュード けっこう難しそうです!
> 脳内で想像してみたのですが
> 連弾ブギウギチューリップも楽しそうだなぁ(☆▽☆)
> ばんちゃん会でね~み♪さんに頼むかもしれません(^▽^)うふふ
> その時はよろしくお願いします!←私の酔っ払い具合によるかも?ですが

わあい!
連弾ブギウギチューリップ!!きっととても楽しいアレンジなんでしょうね~(^^)
前の「ねこふんじゃった」もすごく刺激的でしたもん(*^ー^*)
その際はぜひよろしくお願いしますね~!

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2番目の鍵コメさんへ

花束をありがとう♪
お心遣い、嬉しく感じてよ♪
次回はぜひ、鍵コメさんもリサイタルにいらしてね♪
それでは、ごきげんよう。

セレブね~みより
Secret

記念日

プロフィール

ね~み♪

Author:ね~み♪
子供の頃習っていたピアノ。
2013年より25年ぶりに独学で再開、
2014年3月より先生について習い始めました。
夫と二人の子供がいるアラ50です。

♪ただいま練習中♪

ツェルニー40番-39番
バッハ 平均律2巻 8番フーガ
ショパン エチュードOp.25‐12

2017年レッスン終了した曲

バッハ パルティータ6番 トッカータ・インベンション2番
平均律2巻 3番プレリュード・12番プレリュード・パルティータ1番 プレリューディウム
カッチーニ アヴェマリア(編曲もの)
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