2016.12.21
Symphony~allegro
弾き終えたスベルマンの額を汗が流れ落ちていた。
息は荒くその端正な顔は上気していた。
まだ初めて人の前で演奏した興奮で手が震え、肩で息をしている。
固唾を飲んで見守っていた主はゆっくりと立ち上がると「ブラヴォー!」と手を叩いた。
先ほどまでの何者か見定める厳しい眼差しから打って変わって賞賛の表情になっていた。
「いや、驚いた、一体君はどこの学校を出たんだ?コンセルヴァトワールか、ジュリアードか?」
スベルマンは主の思ってもみない反応に狼狽えていた。
慌てて椅子から立ち上がると
「い、いえ…、私はどこも出ていません。ピアノを弾いたのは…今が初めてです…」
「…え?初めて??・・・いやいや、君、冗談だろう??…あぁ、ここで弾くのは初めてという事かね」
「あ…いえ、ピアノを弾くのが初めてなのです。」
「いや、君、冗談はよしたまえ。いくらなんでもそれはあり得ない。こんな曲を習ったことも無い人間が弾けるはずが…」
二人はピアノを挟んで向かい合っていた。
主はまじまじとスベルマンの目を見た。
(この若者、嘘をついているようには見えないが…)
だが、にわかに信じ難い光景を今体験しているのか?
「いえ、彼の言葉は真実よ」
突然部屋に入ってきたね~みの声が響き渡った。
外出から戻ってきたのだ。
「あなた、おかえりなさいませ。驚いたでしょう!でもわたくしもあなたには驚かされたから、おあいこね」
「ああ、実は思ったより早く仕事が片付いてね。ところでこの使用人は一体どこのピアニストなんだい?」
二人は同時にスベルマンの方を向いた。
「わたくしも、さっき初めてスベルマンがピアノを弾くのを聞きましたの。驚いて何も言えなかったわ!さ、スベルマン、その美しい音をもっと聞かせてちょうだい」

どうしていいかわからず二人のやり取りを聞いていたスベルマンは、
ようやく自分の置かれた状況が理解出来てきた様子だった。
どうやら生まれて初めて弾いたピアノが、奏でた音楽が、主とね~みに受け入れられたらしい事
そしてこの事は普通の人間には信じ難いような事であるらしい…。
促されるままスベルマンはまたピアノの前に座った。
さっき震えながら弾いた鍵盤の上に細く長い指を乗せ、気持ちを集中させる。
スベルマンの知っている曲は1つしかない。
この状況で同じ曲をもう1度弾けるだろうか…さっき弾いたのはもしかしたら奇跡かもしれない…
そう不安になりながらも自分を信じてもう1度、弾き始めた。
その音はさっきより確信に満ちた、朗々とした音であった。
息は荒くその端正な顔は上気していた。
まだ初めて人の前で演奏した興奮で手が震え、肩で息をしている。
固唾を飲んで見守っていた主はゆっくりと立ち上がると「ブラヴォー!」と手を叩いた。
先ほどまでの何者か見定める厳しい眼差しから打って変わって賞賛の表情になっていた。
「いや、驚いた、一体君はどこの学校を出たんだ?コンセルヴァトワールか、ジュリアードか?」
スベルマンは主の思ってもみない反応に狼狽えていた。
慌てて椅子から立ち上がると
「い、いえ…、私はどこも出ていません。ピアノを弾いたのは…今が初めてです…」
「…え?初めて??・・・いやいや、君、冗談だろう??…あぁ、ここで弾くのは初めてという事かね」
「あ…いえ、ピアノを弾くのが初めてなのです。」
「いや、君、冗談はよしたまえ。いくらなんでもそれはあり得ない。こんな曲を習ったことも無い人間が弾けるはずが…」
二人はピアノを挟んで向かい合っていた。
主はまじまじとスベルマンの目を見た。
(この若者、嘘をついているようには見えないが…)
だが、にわかに信じ難い光景を今体験しているのか?
「いえ、彼の言葉は真実よ」
突然部屋に入ってきたね~みの声が響き渡った。
外出から戻ってきたのだ。
「あなた、おかえりなさいませ。驚いたでしょう!でもわたくしもあなたには驚かされたから、おあいこね」
「ああ、実は思ったより早く仕事が片付いてね。ところでこの使用人は一体どこのピアニストなんだい?」
二人は同時にスベルマンの方を向いた。
「わたくしも、さっき初めてスベルマンがピアノを弾くのを聞きましたの。驚いて何も言えなかったわ!さ、スベルマン、その美しい音をもっと聞かせてちょうだい」

どうしていいかわからず二人のやり取りを聞いていたスベルマンは、
ようやく自分の置かれた状況が理解出来てきた様子だった。
どうやら生まれて初めて弾いたピアノが、奏でた音楽が、主とね~みに受け入れられたらしい事
そしてこの事は普通の人間には信じ難いような事であるらしい…。
促されるままスベルマンはまたピアノの前に座った。
さっき震えながら弾いた鍵盤の上に細く長い指を乗せ、気持ちを集中させる。
スベルマンの知っている曲は1つしかない。
この状況で同じ曲をもう1度弾けるだろうか…さっき弾いたのはもしかしたら奇跡かもしれない…
そう不安になりながらも自分を信じてもう1度、弾き始めた。
その音はさっきより確信に満ちた、朗々とした音であった。
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